闇の中で……
少々読み辛いですが、オリジナルのクトゥルー小説です。
「闇の中で……」
寒い。
暗闇の中で目覚めたあなたが感じたのは、身を刺すような寒さだった。
体を抱くようにしてあなたは立ち上がり、周りを見渡してみる。しかし、周囲は完全な暗闇で、顔の前にかざした自分の手さえ見えないほどである。
ここはどこだろう。
あなたは記憶を探ってみるが、何も思い出せなかった。ここがどこで、なぜこんな所で倒れていたか、と言う事だけではなく、自分が誰で、どんな人生を送ってきたかという自身に関する記憶さえ、全く思い出せないのだ。
不安と困惑が、あなたの心に広がっていく。
次第に暗闇の中でたった一人何も分からない状態でじっとしている事が恐ろしくなり、あなたは手探りでその場から歩き出した。
もう、どれ位進んだだろうか。行けども行けども、前に伸ばしたあなたの指先が壁に突き当たる事は無く、足もズキズキと痛み始めてきている。一体、ここはどれだけの広さがあるのだろうか。
不意に、どこからかフルートと太鼓の音色があなたの耳に届いた。
誰かいる。
孤独と恐怖に押し潰されそうになっていたあなたは、足の痛みも気にする事なく、音のする方へと走り出した。 しかし、音の発信源へと近付くにつれて、あなたは一抹の不安を覚え始めた。
もしかすると演奏している者達こそ、あなたをここに連れてきた犯人なのかもしれない。だとしたら、何の用意もなしにのこのこと近付いて行ってもいいのだろうか。
あなたは走るのを止め、足音を殺してゆっくりと、得体の知れぬ演奏者の方へと歩き出した。
一歩、また一歩と近づくにつれて少しずつではあるが、その調べが単調で、しかしどこか歪んでいる事が聞き取れてきた。それは、明らかに人間なら吐き気を催す程の歪な調べだ。
今度こそ、あなたは不安等ではなく確かな恐怖を感じた。まともな精神の持ち主であれば、このような演奏をするはずがない。
しかし、たとえ狂人であれ、たった一人でいるよりかは幾分かはましかもしれない。
あなたは足音を殺したまま演奏者の近くと思わしき所まで来ると、息を潜めて暗闇の向こうにいる演奏者の様子を伺った。
だが、普通であればしばらく闇の中にいたら少しずつ目が慣れるはずである。しかし、今のあなたは全くそれがない。完全な闇の中で誰とも知れない演奏者を音だけを頼りに伺っているだけである。
もしかしたら、自分は目が見えなくなっているのかもしれない。
あなたの頭の中にそのような考えが浮かんだ。それだったら、この慣れない暗闇にも説明が付く。だとしたら、ここは本当は明るくてあなたは演奏者から丸見えだという事になる。
だが、それならば何故、演奏者はあなたに気づくことなく演奏を続けているのだろうか。
しばしの思案の末、あなたは意を決して演奏者とコンタクトを取る事にした。
すぐ目の前で音が聞こえる距離まで近づき、あなたは演奏者に声を掛けてみた。しかし、返答は無い。まるであなたの姿が見えず、声も聞こえていないかの様に反応が全く無い。
その後も何度か声を掛けてみるが、あまりの反応のなさにあなたは次第に腹が立ってきた。
あなたは演奏者がいるであろう方へ手を伸ばし、相手を掴もうと試みるが、いかんせん、一寸先も見えない闇の中である中々上手くいかず、あなたの手は幾度と無く空を切った。
そして、十数回目の挑戦でようやくあなたは相手を掴む事に成功した。しかし、返ってきた感触は人間の肉や衣類、金属のそれではなく、ぶにょっ、とした気味の悪いものだった。
思わず手を離すと粘着質の、ドロリとした液体のような物があなたの手に付着していた。
一体、これは何だ。
その未知の感触と液体に、あなたの思考は爆発寸前だった。
あなたが掴んだとき、僅かではあるが演奏が乱れたため、あの奇妙な感触のものが演奏者である事は確かではあるが、あの感触と液体の様な物はどちらもあなたが始めて経験するものだった。
こいつは、本当に人間なのか。
極々単純な疑問をあなたは思い浮かべるが、すぐにそれを否定した。これは、明らかに人間の感触ではなく、この液体は人間が分泌するようなものではない。
そう、その感触は言うなれば誰もが一度は化学の実験で作ったことのあるスライムに近い。それを人間と同じくらいの量を作って置いていたならばその奇妙な感触には説明がつく。
しかし、何故。誰が何の目的でこの様な事をする必要があるのだ。それに、化学の実験で作られたスライムが楽器を演奏するはずがない。
言い様の無い恐怖が、あなたの思考を占める。
気がつくと、あなたは演奏者に背を向けて無我夢中で走り出していた。少しでも遠く、少しでも早く恐怖の元から逃げ出したい、とあなたは心の奥底からそう思っていた。
しかし、走っても走っても、闇の終わりは見えてこない。それどころか、何故かどこまで行こうとも歪んだ調べはあなたを追いかけて来るかの様に常にあなたの鼓膜を震わせ続けるのである。
気が狂う程の恐怖。今まで考えだにしなかったそれが今まさしくあなたを襲っているのだ。
不意に、演奏が途切れた。
あなたは安堵と一抹の不思議さを覚えてその場で足を止め、そのまま座り込んでしまった。だが、すぐにそれが間違いであることに気付いた。
闇の中に、闇の奥に得体の知れない途方もなく巨大で恐ろしい存在がある事をあなたは感じ取ったのだ。
それが何なのかは分からない。しかし、強大な力を持ち、人間では到底理解しえない存在だという事だけは理解出来た。
逃げなければ。頭ではそう思っていても、あなたはその強大すぎる恐怖に動くことが出来ず、ただその場に座り込み震えるだけしか出来なかった。
どれだけの間、あなたはその存在に恐怖したまま座り続けていただろうか。あなたの精神は遂に湧き上がってくる恐怖に耐え切れず、均衡を崩し始めていた。
終わりの無い恐怖。それを感じながら、あなたは闇の中で孤独に正気を失っていった……。
「闇の中で……」
寒い。
暗闇の中で目覚めたあなたが感じたのは、身を刺すような寒さだった。
体を抱くようにしてあなたは立ち上がり、周りを見渡してみる。しかし、周囲は完全な暗闇で、顔の前にかざした自分の手さえ見えないほどである。
ここはどこだろう。
あなたは記憶を探ってみるが、何も思い出せなかった。ここがどこで、なぜこんな所で倒れていたか、と言う事だけではなく、自分が誰で、どんな人生を送ってきたかという自身に関する記憶さえ、全く思い出せないのだ。
不安と困惑が、あなたの心に広がっていく。
次第に暗闇の中でたった一人何も分からない状態でじっとしている事が恐ろしくなり、あなたは手探りでその場から歩き出した。
もう、どれ位進んだだろうか。行けども行けども、前に伸ばしたあなたの指先が壁に突き当たる事は無く、足もズキズキと痛み始めてきている。一体、ここはどれだけの広さがあるのだろうか。
不意に、どこからかフルートと太鼓の音色があなたの耳に届いた。
誰かいる。
孤独と恐怖に押し潰されそうになっていたあなたは、足の痛みも気にする事なく、音のする方へと走り出した。 しかし、音の発信源へと近付くにつれて、あなたは一抹の不安を覚え始めた。
もしかすると演奏している者達こそ、あなたをここに連れてきた犯人なのかもしれない。だとしたら、何の用意もなしにのこのこと近付いて行ってもいいのだろうか。
あなたは走るのを止め、足音を殺してゆっくりと、得体の知れぬ演奏者の方へと歩き出した。
一歩、また一歩と近づくにつれて少しずつではあるが、その調べが単調で、しかしどこか歪んでいる事が聞き取れてきた。それは、明らかに人間なら吐き気を催す程の歪な調べだ。
今度こそ、あなたは不安等ではなく確かな恐怖を感じた。まともな精神の持ち主であれば、このような演奏をするはずがない。
しかし、たとえ狂人であれ、たった一人でいるよりかは幾分かはましかもしれない。
あなたは足音を殺したまま演奏者の近くと思わしき所まで来ると、息を潜めて暗闇の向こうにいる演奏者の様子を伺った。
だが、普通であればしばらく闇の中にいたら少しずつ目が慣れるはずである。しかし、今のあなたは全くそれがない。完全な闇の中で誰とも知れない演奏者を音だけを頼りに伺っているだけである。
もしかしたら、自分は目が見えなくなっているのかもしれない。
あなたの頭の中にそのような考えが浮かんだ。それだったら、この慣れない暗闇にも説明が付く。だとしたら、ここは本当は明るくてあなたは演奏者から丸見えだという事になる。
だが、それならば何故、演奏者はあなたに気づくことなく演奏を続けているのだろうか。
しばしの思案の末、あなたは意を決して演奏者とコンタクトを取る事にした。
すぐ目の前で音が聞こえる距離まで近づき、あなたは演奏者に声を掛けてみた。しかし、返答は無い。まるであなたの姿が見えず、声も聞こえていないかの様に反応が全く無い。
その後も何度か声を掛けてみるが、あまりの反応のなさにあなたは次第に腹が立ってきた。
あなたは演奏者がいるであろう方へ手を伸ばし、相手を掴もうと試みるが、いかんせん、一寸先も見えない闇の中である中々上手くいかず、あなたの手は幾度と無く空を切った。
そして、十数回目の挑戦でようやくあなたは相手を掴む事に成功した。しかし、返ってきた感触は人間の肉や衣類、金属のそれではなく、ぶにょっ、とした気味の悪いものだった。
思わず手を離すと粘着質の、ドロリとした液体のような物があなたの手に付着していた。
一体、これは何だ。
その未知の感触と液体に、あなたの思考は爆発寸前だった。
あなたが掴んだとき、僅かではあるが演奏が乱れたため、あの奇妙な感触のものが演奏者である事は確かではあるが、あの感触と液体の様な物はどちらもあなたが始めて経験するものだった。
こいつは、本当に人間なのか。
極々単純な疑問をあなたは思い浮かべるが、すぐにそれを否定した。これは、明らかに人間の感触ではなく、この液体は人間が分泌するようなものではない。
そう、その感触は言うなれば誰もが一度は化学の実験で作ったことのあるスライムに近い。それを人間と同じくらいの量を作って置いていたならばその奇妙な感触には説明がつく。
しかし、何故。誰が何の目的でこの様な事をする必要があるのだ。それに、化学の実験で作られたスライムが楽器を演奏するはずがない。
言い様の無い恐怖が、あなたの思考を占める。
気がつくと、あなたは演奏者に背を向けて無我夢中で走り出していた。少しでも遠く、少しでも早く恐怖の元から逃げ出したい、とあなたは心の奥底からそう思っていた。
しかし、走っても走っても、闇の終わりは見えてこない。それどころか、何故かどこまで行こうとも歪んだ調べはあなたを追いかけて来るかの様に常にあなたの鼓膜を震わせ続けるのである。
気が狂う程の恐怖。今まで考えだにしなかったそれが今まさしくあなたを襲っているのだ。
不意に、演奏が途切れた。
あなたは安堵と一抹の不思議さを覚えてその場で足を止め、そのまま座り込んでしまった。だが、すぐにそれが間違いであることに気付いた。
闇の中に、闇の奥に得体の知れない途方もなく巨大で恐ろしい存在がある事をあなたは感じ取ったのだ。
それが何なのかは分からない。しかし、強大な力を持ち、人間では到底理解しえない存在だという事だけは理解出来た。
逃げなければ。頭ではそう思っていても、あなたはその強大すぎる恐怖に動くことが出来ず、ただその場に座り込み震えるだけしか出来なかった。
どれだけの間、あなたはその存在に恐怖したまま座り続けていただろうか。あなたの精神は遂に湧き上がってくる恐怖に耐え切れず、均衡を崩し始めていた。
終わりの無い恐怖。それを感じながら、あなたは闇の中で孤独に正気を失っていった……。
『黄昏の教室で……』
「消えてしまいたい」
彼女は口癖の様にそう言っていた。
放課後の教室で、僕と彼女は毎日の様に二人で話をしていた。授業の話、好きな漫画の話、音楽やテレビの話。飽きる事無く、僕達は様々な事を話した。
そんな中、将来の話になると、彼女は決まってその言葉を呟いた。その横顔が、眼を離したら消えてしまいそうに思えて、僕は慌てて話を逸らすのが常だった。
はっきりと言おう。僕は、彼女に好意を抱いていた、と。それが、いつからだったかはハッキリと分からない。最初の頃は、単なる女友達としか、彼女を意識していなかった。男友達とするような猥談も普
通にしたし、当時好きだった女の子について相談もした。しかし、いつしか僕のこの想いは生まれていたのだ。
しかし、僕がこの想いを口に出す事は一度として無かった。口に出して彼女との関係が変ってしまう事が恐ろしくて堪らなかったのだ。臆病者と言われればそれまでだが、僕にとって今の彼女との関係が何よりも大切な物だったのだ。
卒業が間近に迫ったある日の放課後、僕はいつもの様に黄昏にそまる教室で、彼女の横顔を眺めていた。窓際に立って空を眺めるその横顔は、いつも以上に儚く、手を伸ばさなくてはならない様な気がしてしょうがなかった。
その時、僕はどうすれば良かったのかは、今になっても答えは分からない。分かるのは唯一つ。その時の僕は選択を間違えてしまったという事だ。
僕は、いつもの様に話を逸らそうと、鞄の中からようやく手に入れた、以前から彼女が読みたいと言っていた雑誌を取り出そうと、彼女に背を向けて身を屈めた。
不意に、僕の頬をひんやりとした冬の風が撫でた。恐らく、彼女が窓を開いたのだろう。
雑誌を手に持ち、顔を上げると、そこに彼女の姿は無く、ただ、白い無機質なカーテンが風に揺れているだけだった。
かなり久しぶりに小説の更新です。もう、最近は妙にストレスが溜まるわ、忙しいわで本当にキツイ。
というか、ある友人Mの行動に大分キレているんですけどね。ブチキレカウント5です。後少しで久々にキレますよ。(笑
彼女は口癖の様にそう言っていた。
放課後の教室で、僕と彼女は毎日の様に二人で話をしていた。授業の話、好きな漫画の話、音楽やテレビの話。飽きる事無く、僕達は様々な事を話した。
そんな中、将来の話になると、彼女は決まってその言葉を呟いた。その横顔が、眼を離したら消えてしまいそうに思えて、僕は慌てて話を逸らすのが常だった。
はっきりと言おう。僕は、彼女に好意を抱いていた、と。それが、いつからだったかはハッキリと分からない。最初の頃は、単なる女友達としか、彼女を意識していなかった。男友達とするような猥談も普
通にしたし、当時好きだった女の子について相談もした。しかし、いつしか僕のこの想いは生まれていたのだ。
しかし、僕がこの想いを口に出す事は一度として無かった。口に出して彼女との関係が変ってしまう事が恐ろしくて堪らなかったのだ。臆病者と言われればそれまでだが、僕にとって今の彼女との関係が何よりも大切な物だったのだ。
卒業が間近に迫ったある日の放課後、僕はいつもの様に黄昏にそまる教室で、彼女の横顔を眺めていた。窓際に立って空を眺めるその横顔は、いつも以上に儚く、手を伸ばさなくてはならない様な気がしてしょうがなかった。
その時、僕はどうすれば良かったのかは、今になっても答えは分からない。分かるのは唯一つ。その時の僕は選択を間違えてしまったという事だ。
僕は、いつもの様に話を逸らそうと、鞄の中からようやく手に入れた、以前から彼女が読みたいと言っていた雑誌を取り出そうと、彼女に背を向けて身を屈めた。
不意に、僕の頬をひんやりとした冬の風が撫でた。恐らく、彼女が窓を開いたのだろう。
雑誌を手に持ち、顔を上げると、そこに彼女の姿は無く、ただ、白い無機質なカーテンが風に揺れているだけだった。
かなり久しぶりに小説の更新です。もう、最近は妙にストレスが溜まるわ、忙しいわで本当にキツイ。
というか、ある友人Mの行動に大分キレているんですけどね。ブチキレカウント5です。後少しで久々にキレますよ。(笑
